【pattern6・迷継ノア】
「うふふー」
まえから気味の悪い笑い声を漏らして歩いてくる白雪を発見して、ボクはかなり引いた。
頭にはとんがり帽子。胸元のリボンは紫とオレンジのハロウィンカラー。腕いっぱいにたくさんのお菓子を抱えて、彼女はほくほく顏で歩いていた。どうせこのイベントに便乗してお菓子をそこらじゅうから強奪してきたんだろう。光景が目に浮かぶようだ。
「………………」
「あ、迷継ちゃん!やっほー!」
できれば気づいて欲しくなかったが、やっぱりそうは問屋がおろさないらしく、ふつうに白雪はこちらを発見するとぱたぱたと駆け寄ってきた。
「……なんでそんな中途半端なコスプレみたいな格好してるんだい」
「えー?知らないの迷継ちゃん?今日はハロウィンなんだよ!ハロウィン!」
「…いや、知っているけど」
にこにこ笑う白雪のまわりには花でも舞っているんだろうか。幻覚か。
その腕の中にはチョコレートやらたい焼きやらパイらしきものまで和洋折衷、さまざまなお菓子が抱えられていた。この子はこれをひとりで食べる気なんだろうか。鉄の胃袋でももっているの……?
「というわけで迷継ちゃん、とりっくおあとりーと!お菓子くれなきゃ悪戯しますよ!」
「……えーと」
手ぶらな手のひらをひらひらさせる。それからスカートのポケットに手を入れてなにかないか探る、しかしながらふだんからそんなにお菓子を持ち歩かないボクのことである、どんなに探してもお菓子なんて入っているわけないじゃないか。
「…………」
「あれー?迷継ちゃーん?もしかしてお菓子持ってないのー?あららー?」
にやにや笑う白雪の顔を張り倒したくなる、しかしこらえた。えらい自分。
「じゃあ悪戯ですかなー?いたずらー」
「…はあ。ケーキ奢るから勘弁して欲しいんだけれど」
「ケーキ!いいよ!」
ころっと白雪は態度を変える。まえからおもっていたが、この子はおさないころお菓子あげるからついてきてー的な不審者につかまらなかったのだろうか。飴にすぐつられる。後先考えない行動が多すぎる。
…だからこそ、鞠桐白雪なんだろうか。
「わたしレモンパイたべたいなー」
「…その持ってるなかにパイらしきものがみえるんだけど」
「ああ!ナコちゃんにもらったのー!迷継ちゃんもたべるー?」
「お腹減ってるときにね」
お菓子を抱えてわらう彼女は楽しそうで、きっとそれはこころからの笑みだ。こういった日常も、彼女の願いの糧になるのだろう。
「…うん、」
ボクは、それを見届けに行こう。