【pattern5・ナデシコ=ハクリシカ】
「ナーデシーコちゃーん!あっそびーましょー!」
ベットに腰掛けてうつらうつらしていた私はその元気な声にはっとして顔を上げました。
《雛翼》本部のとなりの寮にある自分の部屋です。いつのまにか部屋には甘いいい香りが満ちていました。あ、そろそろ完成したのかしら、寝起きの頭でぼんやり考えていたら、いきなり目の前に白雪ちゃんの顔がぬっと現れたのでとてもびっくりしました。
「わ、白雪ちゃんだ」
「んーんー白雪ちゃんですよー!どしたのナコちゃん、ねむそうなかおー」
「うんー…きのう遅かったからかなあ」
「そうなの?ねえ、それよりなにかつくってるの?なんかいい匂いがするー」
さすが白雪ちゃん。目ざとい…というより鼻がいいのかな、すぐに気づきますね。
「あのね、たぶんアップルパイができあがったんだとおもうの」
「アップルパイ!」
とたんに白雪ちゃんは目をきらきらと輝かせ始めました。ふふ、おもわず笑みがこぼれます。かわいい。私はゆっくり立ち上がって一度首を回すと、ぺたべたとキッチンに向かって歩き出しました。その後をおとなしく白雪ちゃんもついてきます。そういえばいま気づきましたが、なぜでしょう、白雪ちゃんは頭のうえに真っ黒い魔女のとんがり帽子をのせていました。ううん、なんだろう。そういえば胸元のリボンもいつもとなんだかちがいますし、なんだろう、お洒落?
オーブンの前に立って、ミトンを手につけてアップルパイを取り出します。今日はパイシートはつかわないで粉からつくったからどきどきします。甘茶色に焦げ目のついた煮たりんごと、見た目からさくさくしていそうなパイ。うん、いい匂いがしました。
「白雪ちゃん、切るの手伝ってくれる?」
「よろこんで!」
私が今日はハロウィンだと知るのは、もうすこしあとのはなし。