【pattern3・浅科灯夜】
「お菓子おくれ!」
私はなんにだって効率重視のスタイルでありました。なぜなら私は浅科灯夜だから!ふふん、なんだってこの一言で片付けられちゃうの、ほんとに自由っていいものね。
「あ、白雪じゃないですか。なんかいい格好してますねえ」
がたんごとん、車内列車が揺れている。人気のないこの列車は話によればアクセスが悪いだのなんだので《雛翼》には不評らしいのだけど、私は気に入ってる。人気がないところってすてき。大きな窓から外がみえる。ぼんやりした空。この世界はどこにあるのだろう。不確定ながら安定の世界。
「あれ、浅科ちゃんだったんだ。なんか人影がみえたから突撃してみたのさー」
さっき叫びながら私にタックルをかましてきた(電車内だというのに、だ)白雪はくるりとターンしたのちに器用に動いている車内でよろけずに私の前に立つ。きらきらの蜂蜜頭が今日も光に透けてる、相変わらずの目立つ娘。けれどもその無垢な笑顔のうしろにあるなにかがたまにのぞく、そんなところが私にとっての彼女のすきなところなような。
「ね、ところで今日ハロウィンだよ!なんかお菓子おくれ!」
「だからそんな格好してるんですか、ご苦労様ですね」
にやにや笑う私はさながらチェシャ猫のごとく。べつにいまのせりふは皮肉ではないのだけど、そんなふうに聞こえてしまうのはいつものことだからごめんなさいね。
「んーなんかもってたようなきがしなくもなくもねーですけど…あ、」
「なになに?なんかあった?」
「はい、どうぞどうぞ」
ごそごそとスカートのポケットをさぐっていたらかさりと指先になにかが触れたので引っ張り出す。にこりと人の良さそうな笑みを意識的にはりつけてそれを差し出した。
「ラムネですけど、好きですか?」
「すきすきー!ありがと浅科ちゃん!」
うひゃあ、と叫んで笑う彼女はやはりへんなひと。《雛翼》でありながらそんなに無防備なのはこの子とナデシコ・ハクリシカくらいでしょう。私の動作はすべてが虚だと言い表したのはたしか、心せんせいか。
ぷしゅう、と気の抜けた音とともに電車が止まる。私の目的地はここではなかったけど、ここでおりることにしてドアの前に立った。
「あれ?浅科ちゃんここでおりるの?」
「そうです、たまには見回りくらいしなくちゃいけないでしょう?」
首をかしげている白雪に笑ってみせる。
「じゃあ、また」
あなたの存在が私にとって価値あるものでよかったと思える日が、きっとくるだろうね。
なんて、こころのなかでわらった。