祈りに代えて星は瞬く
(1/4)

「ねえ【彼岸花】、新入りの顔を見に行かない?」
【スリープキラー】はそう言って、気さくに笑いました。私はぼんやりしていた頭で言われた内容について考えて、それからゆっくりと、そのことばを復唱します。
「新入り?」
「そう。あれ、聞いてない感じ?」
「……」
 そういえば、そのようなことを前に【伯爵】が口にしていたような気がします。とある、雨の日に。
 それを伝えると、ぐいっと力強く腕を引かれました。
「ね、気にならない? 【刀鍛冶】だなんて物騒ななまえ貰ったのがどんな子か」
 美味しそうな子だといいねえ、なんて言って天井を見上げる【スリープキラー】を見つめながら、私は首を振りました。
「興味ないからいい」
「えーっ、そお?」
 うーん、と悩まし気に人差し指を顎にあてる彼の手首で、豪奢なブレスレットがきらきら光っていました。そのまま私が無為に窓の外を眺めていると、
「じゃあ仕方ないなあ」
 と言いながら、【スリープキラー】は踊るように歩いていきました。フリルのあしらわれた長いスカートがひらひらと蝶の羽のように遠ざかって、その名の通り、馬の尻尾みたいにていねいに梳かれたポニーテイルが金色の軌跡をつくります。
 こつ、こつ、こつ……という硬質な靴音に耳を澄ませて、新入り、とやらのことを想像してみました。彼の形容する『美味しそう』の意味はよくわからなくて、【伯爵】も新入りについてはなにも教えてくれなかったから、私の頭に浮かんだのっぺらぼうの顔にはいつまでたってもパーツが置かれないまま。
 私ははやばやと想像することをあきらめて、【スリープキラー】とは逆の方向に歩き出しました。