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データ.3 辻尾菊寺
黒色眼鏡
ブレザーなし 白いシャツ
黒髪ストレート
《今日もいつもと変わりなく》
○図書委員隊長 松野桜花
○掲示委員副隊長 波浪流雨,琉晴
○美化委員隊長 白ノ宮劉江
副隊長 東山永瀬
○飼育委員隊長 瑞穂滝
○放送委員隊長 原空海
○風紀委員隊長 菱田まふ
○体育委員隊長 神田深月
副隊長 遥木紺
○生徒会長 辻尾菊寺
○生徒会会計 三宮天音
○市庵薫
「……なにこれ?」
「本日の会議の参加名簿ですよー」
なぜ真帆ちゃんがこれを持っているのだろう……。まぁ、おおかた桜花が私に見せるために真帆ちゃんに授けたとかそこらへんだろう。ならばありがたく受け取るまで。ありがとう。
いつもは参加率が悪い委員会議も、今回ばかりは集まっていた。……いや、いつもが異常なのか……?
「保健委員、がいないね…」
「だって、保健委員の隊長はいま研修中ですし、副隊長は彼女ですよ?」
彼女ですよ、で会議不参加の理由になるのかと思うところだが、ぶっちゃけなるのだこれが。彼女、周りへの関心がないわけではないが結構低めだから。
「で、ですね!苑蘭ちゃん!」
にっこーと微笑ましい笑顔で真帆ちゃんは手を差し出してきた。細く綺麗な指が掴んでいたのは。
「……?イヤホン?」
「はい!盗聴器です!」
嘘だろおい。とんでもないこと言いやがったぞ笑顔で。笑顔で!!
「桜花が盗聴器を仕込んで行ってるので、苑蘭に聞かせろとのことです」
そこまでするか桜花。別に会議がどうなろうとどうでもいいのだが。……いや、会議の内容によっては私がとてつもなくこの事柄に巻き込まれるってことか。
「……聞く」
「そうこなくっちゃーですよ!」
なぜかノリノリの真帆ちゃん。今日もとても可愛いですよはい。
イヤホンを耳に入れて、最初に聞こえたのは。
『いままで話さなかったんだから、ここで話すわけないじゃない!』
やけに楽しそうに言う通常運転の薫の声だった。知ってた。自身について問われる会議なのに、いつもの姿勢を崩さないこと、わかってた。けど。
「しばかれてしまえっっ!!」
イヤホンを思いっきり床に投げつけた。
「苑蘭ちゃん!物は大切にあつかってください!」
ごめんなさい。イヤホンを付け直した。
『…………、……、…だし、君が全部話してくれるだなんて期待はしてなかったけれどもね。』
次に聞こえてきた声は、えっと、誰だろう。聞いたことはある。私、人の声でその人だって判別するの得意じゃないからわからないぞ。友達か、どっかの野郎みたくいじめかと思うほど名前を連呼されれば、嫌でもとてつもなく嫌でも覚えるのだけれど。
『それはドライすぎると思うよ!みーちゃん!』
みーちゃん、という言葉で、この声と先ほどの声の人が誰だか分かった。体育委員部隊の2人だ。
『口割らない人に何言っても無駄だろうってことだよ……』
多少声が低くなったのは、きっとみーちゃんという女の子のようなあだ名で呼ばれたからイラついたが、会議中なので抑えた、からだろう。体育委員隊長、神田深月。正真正銘の男である。そういえば、薫も女の子っぽい名前だよなぁ……。
『その口を割らせるための会議だろっ?おい、市庵薫!そういうわけだからとっとと吐け!』
このなんだかとってもあつい人は、体育委員副隊長、遥木紺だ。2人とも、名前は出てきたが顔があやふやだ。ただ、隊長の方はやけに細くて、副隊長の方はちょっとチャラかった気がする。そうぼんやり思っていたら、再び奴の声が聞こえた。
『いやだから、簡単に割る口は持ってないって。もっと口八丁手八丁でやってくれないと割れないよー』
「なに様だあの野郎!!!」
イヤホンを思いっきり床に投げつけた。
「苑蘭ちゃん!図書室では静かにですよっ!」
ごめんなさい。
イヤホンを再び耳につける。既視感。
『……、……てことでいいわけか?』
お、なんか重要なところ聞き逃した?
ちら、と真帆ちゃんに視線を送ると、真帆ちゃんはすぐに視線に気づき、またなにを求めているのかを察したらしい。
「自由にあれこれ調べるぶんには問題ないってことか、と。」
「ありがと。」
まぁ、そうなるわな。ふたたび、イヤホンから、奴の声が響いた。
『もちろんだよ』
「もちろんだよ。」
ニヤニヤと笑う薫は、言わずもがなこの状況を楽しんでいた。
「なぁに楽しそうな顔してんだよテメェ……」
よく通る声でそんなことを言ったのは、放送委員部隊隊長原空海だった。なるほど、放送委員だからこんなにも声がよく通るのかと思ったのは他でもない薫であった。
「そもそも、お前は色々と異常なんだろーが。部隊にも入ってないくせに生徒会共々仲良しこよしで、毎日お祭り騒ぎかよおい。なに様だぁ?」
「昨日のお祭り騒ぎには君の部隊も参加していたようだけどね」
口を挟んだのは飼育委員部隊隊長瑞穂滝だった。瑞穂滝が原空海に口を挟んだ途端周りは、またか、と一斉に思った。この2人はよく衝突する。加えて、衝突後の鎮火が非常に遅い。あと、周りへの被害も多少あり。つまりは二次被害が酷い。ほっとけばそこらへんのものを破壊しながらの大乱闘である。
「ああ?」
案の定、原空海は瑞穂滝を睨みつけた。
「そういえば、波浪のお二人さん、君たちが市庵の力を見たとき、この人の部隊員がいたんだっけ?」
いままでおとなしくー実際は、この会議において傍観者としているほうがここを楽しめると踏んだために黙っていただけだがーしていた双子が、同時に顔を瑞穂滝の方へ向けた。そしてクスッと笑った。
「いたねぇ、冷徹そーな無口スナイパーくんが。」
「いた。」
てめぇら、と原空海が小さく舌打ちをする。
「だってよ?なのに君は、力についての情報は双子から聞いたってさ、部下からの報告はなかったんだってね?」
明らかな挑発であった。
「それはあいつの責任だろうが。あと、いまこの会議で関係あるか、ああ?」
「いや?別に。ただ言ってみただけだよ、別に、部下の行いの非は上にあり、ともいうよねぇ、てだけで」
「ってめぇ!」
バンっと大きい音。
しん、と教室が静まり返る。
音を出したのは、争っていた2人ではなかった。全ての視線は、一番前の席、生徒会長に最も近い席に座る、少女生み出したものだった。拳で、机を叩いた。
「うざい。」
松野桜花は、そうはっきり言い放った。それだけでもかなりの威圧があり、それにより瑞穂滝と原空海の争いは終わった。再びの沈黙。
「ぶっちゃけるとだなぁ、」
それを破ったのは、白ノ宮劉江だった。頭をかきながら、面倒くさそうに椅子に寄りかかり、しかし目はしっかりと市庵薫を捉えていた。
「別に私は餓鬼がなにやろうとどーでもいーんだよ。校舎にさえ影響なけりゃあね」
「生徒よりも校舎の心配かよ!」
誰しも思ったことを代表して遥木紺が叫んだ。昨日の深夜のことを思い出し、人知れずぶるりと身震いした2人がいたことには、本人ら以外気づかなかった。
「生徒のことはその他部隊でも安全確保してるだろーが。なぁ、まふ。」
白ノ宮劉江は、視線を斜め前に向けた。そこには、菱田まふ、風紀委員部隊隊長が、なんとも綺麗な姿勢で座っていた。彼女はニコリともせずに静かに言った。
「もちろんですよ、劉江。全校生徒の安全確保が、我々の仕事です。が、私も生徒に危害が及ばないとなれば
、誰がなにをしようと文句はありません。」
「てことだ。じゃ、帰る」
「はぁ?!」
またもや遥木紺が声を上げた。隣の神田深月は、いつものことなんだからいい加減慣れろよ……と呆れていたのはもちろん知るわけもなく。また白ノ宮劉江はそれに全く動じず、さっさと教室から退場した。そのあとを、この会議でついに一言も発しなかった東山永瀬がついていく。
バタン、と扉がしまった。
「ならば、私も退席させていただきます生徒会長。」
「え、菱田先輩……?」
急の宣言に、生徒会長は困惑した。
菱田まふはいつも、たとえどれだけ
どうでもいい会議でも最後まで席を離れない人であった。そのために、今この場で退席するというのは、生徒会長でも予測していなかった。
「昨夜から行方不明となっているあなた方のいう生命体の捜索を、部下だけに任せるわけにはいかないので。」
「そう、それなら仕方ないね」
にこにこと笑う市庵薫に、菱田まふは微かに眉をひそめたが、何も言わずに席を立ち軽くお辞儀をして立ち去った。
そして。
「んじゃ、もう解散でいいんじゃないの?」
「てめぇは黙ってろよ市庵!!!」
本日何度目かの叫びに、遥木紺は自身でもだんだんこの会議が馬鹿らしく思えてきた。
「じゃあ、こうしようよ!」
遥木紺は、聞けよとはもう言わなかった。
「なんでも自由に調べちゃっていいから!どんな手段でも、とにかく自分たちで、僕の力の正体を暴いちゃってよ。そして、いつでもその仮説を聞かせにきてよ。答え合わせしてあげる。誰かが正解を導き出せたら、この力の正体をみんなに教えてやるよ。どう?」
このとき、生徒会長は頭を抱えた。
やはりこいつはこの状況を楽しんでいるまたそのうえでこの先も楽しむために動いているどうしてやろうかこの馬鹿阿保糞野郎は、と思っていた。
「なんだそれは。……俺たちを試す、のか?」
じろり、と原空海が市庵薫を睨む。
「試すなんてそんな!はは!そんなんじゃないさ、ただ、」
『楽しみたいだけだよ、僕は!』
「ついに白状しやがったか野郎め!!!」
「苑蘭ちゃん!そんなに何回も叫ぶと喉枯れますよっ!」
似たような会話を三回くらい繰り返していた。
あああもうばかおるが!
わかっていたけれども!こんなに底辺な奴だとは!!
「にしても、本当に市庵の力はなんなんでしょうかね?」
「この際もう本当にどうでもいい。奴がくたばれば万事解決だと思う。」
「苑蘭ちゃん、目が本気ですねー?」
真帆ちゃんは、この馬鹿らしい会議にすでに飽きたらしく、長い三つ編みにされた自身の髪をいじっていた。
『ああ、あともう一つ。』
「まだあるのか此奴……」
いまこの場に奴がいたら二回ぐらいは引っ叩きたい。なぜ二回かというと、やつは二回以上おとなしくやられているはずはなく、少なくとも三回目以降は華麗に避けて余計にストレスが溜まるからである。(前に不意打ちで二回までなら出来たのだ。)決して二回で満足するわけではない。
『えーちゃんは真実はしらないよ』
一発で我慢しようかな!と思った。
奴が私を面倒ごとから引き離すなんて……!………………。
「いやいやいや!きもちわるっ!」
「苑蘭ちゃん流石にそれは……」
『まぁでも、なにかに役立つかもしれなくもないからアタックするのもありだよ!』
ほらほら、やっぱりこうなるじゃん!そうだよ、奴がこんな面倒ごとに私を巻き込まないなんて優しさ、今までにあった?さてとりあえず今言いたいことは。
「ざっけんなばかおるがあああ!!」