『…もしもし?』
『あー!わたしわたし!ひさしぶりだねー!』
『ああ…君か。なんだい、珍しい』
『いやーたまには電話してみるのもいいかなーって思ってさ!どう?最近ー』
『また唐突な…べつに…なんともないよ』
『えー?なんかあるでしょう?おもしろい情報とか!』
『きみの感性は正直よくわからないからね…』
『迷継ちゃんはさりげひどいなー』
『…それじゃあ、世間話でもしようか』
『せけんばなしー?』
『そう。たとえばきみはしあわせなんてものについて、真面目に考えたことはあるかい?』
『あるかもしれないけどわすれたよー』
『だろうね。きみのことだもの。ま、一般的には満ち足りている状態を言うのだろうけど、どうなんだか』
『んー?』
『この世界に果たしてどれだけ満ち足りている人間がいるのだろうね?たとえば《悪人》、たとえば《骸》、たとえば《贄》、たとえば《処理係》』
『んー…』
『このボクだって、満ち足りてるかどうかはわからないさ。ね、曖昧だろう』
『そうだねー、よく分かんないや』
『またきみは…ひとのはなしを聞く気があるのかい?そういうきみはどうなんだい?自分は幸福だと言える?』
『わたし?わたしはのーくんとあっくんがいれば、それでしあわせだよ?』
『はあ…きみは相変わらず盲目的だね。ま、ボクはとやかく言う気はないけど』
『…迷継ちゃんはどうなの?』
『ボク?ボク個人としてはね、幸福なんてそこらに落ちてるありふれたものだとおもっているよ。価値観の違いさ。それにね、ボクはこの世界に娯楽が溢れている限り、しあわせだから』
『迷継ちゃんらしいねー』
『ところで…いま噂の彼は、どうなんだろうね』
『噂の彼?…ああ、あの子かー。どうなんだろうねー。最近あってないなー』
『そ。ま、本人にしかわからないものもあるか』
『ねー……あ、やべ、よいしょ、っと』
『………ねえ、いま、すごく形容したくない…なんというか、濡れたような、具体的に言うと刃物で肉を切って血が吹き出た音がしたんだけど…きみ、なんの片手間に電話してるんだい』
『ぶっちゃけちゃうと仕事なうでした!つまんなかったから電話したんだよー』
『…あ、そ。じゃあ、そろそろ電話切ろうか。いい加減どやされるだろう?』
『そうだねー。あーやだなー仕事やだあ…はあ。じゃ、ばいばい、迷継ちゃん』
『うん。じゃあね、白雪』
「……じゃあ、今回もはじめようか」
ぶちり。
▽00 憂えて十六夜