淡い世界に浮かぶ花

ごぶっと嫌な音。それを自分が発したなんて、ああもう、嫌だなぁ。
ぼたぼたと、口から手へ、手から地へと、赤いやつが溢れていく。ドロドロとしていてとても触感が悪い。最悪。口の中が不味い。なんか足もふらついてきたよ。
「……っあ、」
かくん、と膝が地に着いてしまった。しかし倒れまいと、そこで体勢を維持した。そういや、いま撃たれたのはどこだろう。あれ?撃たれたんだっけ?刺されたんだっけ?あれ?変だなぁ、ついさっきのことなんだけど。あれ?ついさっきまで私なにしてたっけ?……え、ちょっとまって。これはおかしいじゃないか。私はそんな記憶力悪くないよ。
「……ぁ、……?」
……ねぇ、あれ?ここにいるのは、私だけ?おかしいなぁ。だって、私には幼馴染のハナハナがいて、パートナーのルノグがいて、友達の留哉とライラもいるんだ。私一人だけなんてはずはないんだ。相変わらず口と手は汚くて、赤はだんだん黒っぽくなって、何故だか周りはあやふやなのに、そこだけははっきりしていて。あー、変だなぁこれ。…………あ、そうだ、これは。

夢か。

パチリと目を開ける。

地面が見えた。
赤が見えた。

あいつが見えた。

吐き気がして、我慢しないでそれを出す。
また、赤だった。

あいつが見えた。

なんだかおなかのあたりがじんじんした。

あいつが、見えた。

手で探ると、あるところでとても激痛が走った。

あいつが。
赤で染まって。

そして、起きた。

「……ぅ、あ……」
はぁはぁと、身体は酸素を欲しているのにまともに酸素を取り入れられずに鼓動のみ速くなり、どくんどくんと胸が痛む。
「……ぁ、……ぐ、」
口につけられたマスクを外して、ベットから身を起こす。すぅ、とゆっくり息を吐き、ゆっくりと息を吸う。
暑い、なぁ……。
「よぉ、起きたか?」
気づかなかった。いつものあのニヤリ顏で、奴はすぐ隣にいた。コクリとうなづき、顏をそちらに向ける。
「……なんだ、夢でも見たか」
ああ、やっぱすぐにバレるんだなぁ。
「私、が死ぬ……ゆめ、と。………、が、死ぬ、夢。」
声がかなり掠れていてちょっと驚いた。やつは、うっすらと目を見開き、しかしそれを悟られまいとしているのが分かった。そうか、と奴は言って、手を伸ばして頭を撫でてくれた。そして、あ、ここは現実だなあと理解する。
「じゃ、まってろ、いま医務室のひと呼んでくっから。」
うん、というと、奴はにっと笑って、この部屋を出て行った。
また一人。だけど、もうさっきみたいな不安はない。はやく帰ってこないかな。奴だけじゃなくて、みんなとはやく会いたいな。
ところで、ひとつ、気になることがあるんだけど。

私って、誰だっけ?