天使と悪魔と阿宮さんa

「僕が悪魔で、」
「俺が天使なわけ」
「へぇ」
放課後、我らがクラス、2年3組にて。1つの机を囲う3つの椅子に、2人の男子と1人の女子。2人の男子は向き合ってチェスをしていて、1人の女子はそれをぼーと眺めている。
「へぇ、て。阿宮信じてないでしょう」
「んなんすぐ信じるほうがこえーけどな」
「ふーん」
「話しは聞けや小娘」
耳にピアスをつけてやや長い黒髪を後ろで結んだ男子にじろりと睨まれても、女子はなんとでもないようにふぁ、と欠伸をした。
「んで、それをわたしにカミングアウトした理由は如何に?」
「…掴めねーやつ」
「探してる人がいてさ、」
さらりとした茶髪で、前髪をピンで留めてる男子がにこりと笑っていう。女子は首を傾げた。天使と悪魔の探し人。それには些かの興味があるなぁと女子は思った。
「どんな人?」
「さぁ…?」
「どんなんになってるかねぇ?」
女子は反対側に首をかくんと傾げた。
「てか人になってると思うかい?天使よ」
「あー五分五分?じゃねぇの?悪魔はどう思うんだよ」
「犬とか猫とか」
「は!冗談!」
女子はそのうち天使と悪魔の会話に飽きたのか、再びぼーとチェスを見る。天使と悪魔は、話しながらも駒を動かし続けていたのだ。
「で、だな、阿宮、お前知らないか?奴を」
「さぁ…?」
今の情報でどう答えろと。女子はそう思いながら面倒そうに、とりあえず模範解答であろう返答をした。
「収穫なしかぁ」
「いや、俺らの情報が曖昧すぎたんじゃねぇの?」
「正解」
そうなの?と悪魔の男子は目をパチクリさせて、そうかーとうなづきチェックメイト、と言った。
「うーん、奴はね、神様のお気に入りのペットでね」
「ペット」
「そー、ペット」
「神様のペット」
「そー、神様のペット」
天使の男子はチェックメイトからうまく逃げて、悪魔の男子のナイトを負かした。あぁナイト…そう呟いたあと、悪魔の男子は話を続けた。
「姿は……この世界でいうと…、なんだっけ、ほら、黒い…鳥」
「カラス」
天使の男子が言う。
「そう、カラスに1番近いかも」
「カラスが…神様のペット…ふーん?」
女子はすでにチェスを見るのに飽きて、近くの机に置いてあった本を読み始める。それを天使の男子が没収した。
「で、知らない?」
「カラスはそこらじゅうにいる」
女子は本を取り返そうと手を伸ばすが、座高も身長も腕の長さも天使の男子のほうが上のため、女子の手が本に届くことはなかった。女子はむすっとして大人しく椅子に座りなおした。
「姿はカラスじゃないかもしれない」
「尚更わからない」
「じゃ、質問変えて、最近阿宮の周りに増えたものはある?」
「ん」
迷わず女子は目の前の2人の男子を指す。つい2週間前に転校してきた男子2人。2年生のクラスは5つもあるのに、なぜか同じクラスに転校してきた。男子女子共々から、そこそこの人気を誇っている。
「あーそうだね、僕ら以外で」
女子は少し考えてみるが、なかなか思いつかない。
「……期間は?」
「ん?ああ…どうだろ…ざっと1年前ぐらいから考えていいんじゃないかな」
「そんな前からいなくなったの、そのペット」
「神様と喧嘩したら拗ねちゃって…」
「喧嘩するんだ神様」
女子は1年前からの今までの出来事を思い出してみる。
「あー…」
「おっ心当たりあるか?」
「うーん」
「どっちだよ…」
女子は、天使と悪魔を交互に見て、軽く首を傾げる。
「1年前、増えたといえば、増えたものが…」
「なんだ、犬?猫?」
「まさか無機物か?」
「いや、有機物………てかひと」
ひと?天使と悪魔は顔を見合わせ、ん?と2人して眉をひそめた。
「1年前に、兄さんが増えた」
そんな天使と悪魔に、女子はとくになんの感情を込めずに言った。