言いたいことはひとつだけ
卒業式の日に、つまり、今日、告白しようと思います。
たとえばその日が、わたしとあなたの道が分かれる日でなければ、告白はまだ先でいいやと思っていたでしょう。けれどあなたはその日、都内からわざわざ地方の大学へと行き、わたしはあなたがいない高校生活を一年間おくらなければなりません。そして、きっとわたしはあなたを追いかけることはしないのです。なので、卒業式の日がラストチャンスなのです。ずっとずっと、言えなかったことがあるのです。本当は、もっと早くに言うべきだったのです。誰にも言わず、ただあなただけに。けれど、写真の前でうずくまっているあなたを見ると、どうしてもダメなのです。写真の中で笑うのは、あなたの妹でありわたしの親友です。とても可愛らしい子でした。あの子は友達をたったひとり、つまりわたししか作りませんでした。だから、あの子とあなたが実は本当の兄妹でなく、相思相愛の中であったことも知っていました。だから、わたしはとても告白など出来なかったのです。写真の前でうずくまる彼は、まるであの子が綺麗な花と共に棺桶に入れられた時のように小さかったのです。わたしはあなたに、そっと触れて背中を撫でることしか出来なかったのです。春に言っていた志望校とは別の大学を受け、そこに行くことが決まったことを聞いたとき、わたしはついに決めたのです。あなたがどう答えようが、わたしはそれを受け入れると。そして、いま、わたしはここに立つのです。こちらを見ずに、まだ咲かない桜を見ながら、ぽつりぽつりと話すあなたから目をそらさずに。いま、あなたはこちらがなにも反応しないことに気づいて振り向きます。どうしたの、と聞きます。さぁ、言わなくてはなりません。これからどうなるのか、そしてどうするのか、それは数秒後のわたしに全部任せて、今のわたしはただ言うだけなのです。こちらを見つめる不思議そうなあなたの目は、まるであの時のあの子のよう。とても可愛くて、わたしはあの子が大好きでした。だから、
「わたしは、あの子を殺しました。」
さいごのさいごに、あの子の瞳に映るのがわたしであったことが、これ以上にない幸せなのです。見開かれたあなたの目に映るわたしの目が濡れているのは、きっと、気のせいでしょう。