終焉を迎えた世界にて、
荒れ果てた公園にある、砂場のすぐ横。猫がにゃあと鳴いた。
少女の名前は、たしか緒張なんとかだったはず。なんか名前ですでに終わってるみたいじゃないですか?て笑いながらいう姿がふと浮かぶ。
猫で彼女を連想するのは、彼女がまるで猫のような人であったのと、猫を連れていたことが理由だろう。猫の名前は忘れた。同時に思い出すのはわたしと同学年のはずなのに年が一つ上である、留年少年の彼である。名前は思い出せない。緒張はずっと彼を先輩としか言わなかったから。
彼は確かにわたしと兄ほどではないが顔はよかったし、成績優秀で運動神経も良い人ではあったらしいが、果たしてストーカーじみたことをするほどの人だっただろうか。緒張がわたしにつきまとっていたのはほんの一時期だが、彼女はこのわたしがいまも思い出す時間を作るほどに強烈な人だった。彼の校内活動で彼女の知り得ないものはなく、ときに彼のためにひそかに行動することもあった。面白いのは、彼女のそのストーカー行為は校内限定で、校外では会えたらラッキー!ていう具合に奇妙な線引きがあったことだ。で、なぜか校外ではわたしにつきまとっていた。出会いは覚えてない。だからなぜつきまとわれたかも覚えてない。ただ彼女が相槌さえも打たないわたしにずっとつきまとい、彼についてずっと喋っていた。時折わたしが適当な相槌をうったりなにか返答したりすると、彼女はにかっと笑ってまたぺらぺらと喋る。それがパタリと止んだのもいつかは覚えてないし原因もわからない。しかし、校内で会ったり登下校中に会ったりするたび、彼女はやはりにかっと笑い、しもうさせんぱーい!とブンブン手を振るので、嫌われたわけではないようだった。そして、その隣には大抵何考えてるかわからない、そこそこ美形の仏頂面の彼がいたわけなので、たぶんその彼となにかあったのだろう。
ーしもうさせんぱいって、世界が終わっても変わらなそうですね!
体育館裏の奴と同じようなことを言ったことに、別にいらっとしたわけではない。ただ、その言葉をきいてわたしは反射的に思ったことを、めずらしくわたしはそのまま口にしたのだ。
ーそれをいうなら、あなたは確かになまえは〝オワリ〟だけど、なにがあっても終わらなさそうね。
そのとき、彼女はきょとんとして、おわりだけどおわらない…?とかなんとかぶつぶつ呟いたのち、ぱぁっと顔を輝かせた。それ、いただきです!決め言葉にします!緒張**は終わらない!良いです!すてきです!と言ってそのまま走り去った。きっと例の彼に報告しに言ったのだと思う。
わたしが回想できる中で、一番最後のものがこれだった。果たして彼女はいま、どうしているか。
まぁ、彼女のことだから、どっかで彼と生きているんだろうけれど。
猫を撫でる。
にゃあと鳴く声が、公園の中で小さく響いた。