少女の後始末

ひどく疲れた帰り道だった。

足はだるくいまにも止めたくて、サラサラと揺れる髪が鬱陶しく、じんわりと錆のようななにかが胸に張り付いているように思えた。胃はさっきからぐるぐるして、全てを吐き出したい気分だ。
「そんなに情がうつってましたか」
隣の彼は、呆れるわけでもなく憐れむわけでもなく、ちょっと楽しそうに言った。
「……べつに、」
「あなたの嘘は分かりやすいです」
そんなわけないよ、と呟く。分かりやすいなら、いま、こうしているわけがない。あの人たちが、わたしに、ごみくずにされるわけがない。
「っ、」
あんな光景、もう何回も見たはずなのに。ごみくずとなったあの人たちを思い出した途端、思わず口に手を当てた。吐き気。数年ぶりだった。
どうしよう、だめだ、なんで、あんなことぐらいで、わたし、ちがう、だって、そんな、なんで、こんな、こんなにー、
「大丈夫ですか?5分ぐらいなら身体預かってもいいですけど」
いつもと変わらない、笑いと冷静の混じった声。すぅ、と吐き気が引いていった。現実に戻ってきた感覚。あの光景が、薄れてゆく。小さく呼吸をして、顔を上げて、彼を見る。
どうします?と言いたげの笑い顔で、首を少し傾げながら、両手を広げている彼。
「……わたしは、」
「はい」
「わたしは、わたしはね、」
「はい」
じんわりと目が熱くなった。なにもかも、あの人たちのせいだった。彼とは違う心の底からの笑顔、手のぬくもり、どうでもいい話。そんなもの、だって、ねぇ、いらないでしょう。わたしたちには。
「わたしは、あなただけは裏切らない。絶対に。」
思いを口にしたと、わたしは泣いた。声をあげて、ひどく、声が枯れることも考えずに、迷子の子供みたいにないた。べつにいいだろう、これぐらい。きっと、生涯最後の涙だ。全部ここで出し切ってやろう。
途中、ぎゅ、とつめたいぬくもりを感じた。冷え性の彼だと思う。泣いてるわたしにはよくわからなかった。でも、大丈夫。これでもう、辛い帰り道はきっとない。

ひどく疲れた帰り道は、もうすぐ終わる。