後悔なんて、していない。
ただ、考えてしまうだけだ。
あの日、別の決断をしたならば。
自分は、あいつは、みんなは、果たしてどこでどうなっていたか、と。
水面の下で月に乞え 10
綺麗な黒髪は腰まであり、さらさらと揺れます。
緑色の目は、キラキラと輝いています。
薄汚いマントをはためかせて、少女はそこにいました。
「リアちゃん、こないだの借りはこれで返したからね!もう、わたしが人助けなんてちゃんちゃらおかしいよねぇ!」
ぐっと親指を立てる少女の視線を追うと、再生を終えたリアちゃんがふらふらと立ち上がっているところでした。
「、なん、で、ここ…」
「え?ここにいる理由?偶然偶然、めっちゃ運命!ね!こう、今回はここ!て思って来たらさ、色々な気配するからもう面倒くさいのなんの!て思ったら、リアちゃんが史上最高のピンチじゃん?こないだの偽善者よろしく不死ならたとえ仲間でなくとも助けちゃうリアちゃんに不本意ながら助けられちゃったわたしにとっては、絶好の機会だったってわけなんだよ!」
急に現れたと思ったら、ペラペラと凄い勢いで話し始めた少女は、くっくっとなにが面白いのか笑うことをやめません。そして、
ー〝不死なら〟〝仲間でなくとも〟助ける…
この黒髪少女も不死であり、けれどリアちゃんの仲間ではないと、そういうことでしょうか。ていうか、この人、裁判所の法廷壊しましたよね?
一体いまはなにが起きているのかと、周りを見渡します。法廷を壊した少女を中心にして、周りをみんなで囲っているような立ち位置。こんな状況でもにやりと笑うボスさんは、けれど視線は少女ではないほうを向いています。それを追うと
ざくっ、と赤が舞います。
ー彼の再生が、また止められました。
相変わらずの無表情のトキは、背中に突き刺した短剣を引き抜き、ぱっと血を撒き散らします。
「ーーーートキくん、」
その声を聞き、はっと少女を見ると、可愛らしく笑い、ただ1人を目に捉えている少女。
『女で目は緑、髪は黒髪ロング、身長はお前よりもやや小さい。』
初めて、トキに会った時のことを思い出します。トキの探し人。この少女が…不死の少女が、トキの探している人…?
「…」
トキはゆらりと顔を上げて、少女とトキの視線は交わります。
「久しぶり!惜しかったねぇ油断したねぇ!それとも、わたしが来ることを期待してくれてたりした?んふふ」
トキはなにも言わないのに、少女はペラペラと喋り続けます。
「さて、じゃー借り返しも終わったことだし、ね!仕事を始めますか!」
そこで初めて、少女はくるん、とわたしの方を向きます。わたしのこと、気づいていなかったわけではないのですね…。
「裁判所…じゃない、から、もしかしなくてもシグナルの人?だよね!」
「…まぁ、そうだけど…」
「ああ! じゃあ敵だね!初めまして…」
仰々しく、舞台挨拶みたいに、マントを翻し少女はお辞儀する。
「わたしはレウ、目標は世界を全部壊すこと!これから終焉までよろしくね!」
くらり、と目眩がしました。