14

なーくんは銃口をわたしに向けていた。

「……2回目、だね、今日は。」
「……」
「いままでの入れたら……どうだろ。10回目ぐらいかな。」
「……レウ、」
「10回目。記念日だね。やったね」
「レウ、忘れよう。」
「無理だよ」
「……っ!大丈夫だ……さっきのは偶然、で…つぎに死ねば、きっとまた忘れてる……いままでのことも、また忘れるから……いままでもずっと、そうだったじゃないか……」
それが《正解》であるかのように、なーくんはうっすらと笑う。ああ、そうだ、忘れればいいんだよ、そうだ、簡単なことじゃ、ないか……、そうつぶやいて、なーくんは、笑う。
「……なーくん……」
「そうだよ……いままでも、ずっと、そうだったじゃないか……、ずっと、俺が……レウを、ころし……て……」
なーくんは笑う。
「全部覚えてないレウが、笑って……俺もその隣で……わらって、俺も、すべてをなかったことにして……はは」
なーくんは笑う。
「だから……、レウ、」
なーくんは、泣いて笑う。
なーくんを守る?どの口が言うのか。わたし自身がなーくんを苦しめていたではないか。わたしの全てが。わたしの存在が。わたしは、なーくんを守らなくちゃならないのに。なーくんは、わたしの彼氏なのに。……まだ、あるだろうか?なーくんを、救う方法が。なーくんを、守る方法が。どうやったら、なーくんを……。

「……あ、」

なーくんが苦しいのは、わたしのせいだ。

「……あぁ…」

わたしを殺し続けることが、なーくんを苦しませている。

「……そっかぁ……」

なら、そうする必要を失くせばよいのだ。

「……はは」

「……レウ……?」
なーくんが、戸惑っている。可愛いなぁ、その顔。わたしは、愛しいその顔を見ながら、銃を握った手をゆっくりと持ち上げる。
「……!?どこから……っ」
言って、はっとなーくんは気づく。やっぱり、いつもの冷静さはなくなっていたのだろう。なーくんは二丁の拳銃を持ち歩く人だ。その一個が抜き取られたら、いつものなーくんなら、その瞬間分かるはずだ。あのとき、わたしから目をそらした、そのときにわたしはこの銃をこっそりと引き抜いておいた。……もしかしたら、こうなることを予知していたからかもね?

銃を持ち上げる。
いらないよ。なーくんを傷つけるものは、わたしが許さない。いらないいらない。そんなもの、あってはならない。
「……レ、ウ……?」
大丈夫、なーくん。
「なーくんは、わたしが守るから」
引き金に、指が触れる。

「ありがとう、なーくん」
「っ!」

そして、わたしは引き金を引く。





銃声。静寂。

しばらく、無音の状態が続いた。窓の外の暗闇を、ぼう、と眺めた。少し歩くと、ぱしゃん、と赤い血が揺れた。
そのとき。
バンッと、扉が開いた。
ひと呼吸。そして、あの声がした。
「……なんで……」
ゆっくりと、顔を上げた。よほど急いできたのか、息が切れている。
「なんで……!!」
「……トキ、くん……」
目を細める。
「なんで、お前が……!!」
それは、今までに聞いたことがない叫びだった。とても、苦しそうな……。
顔を、ゆっくりと下げて。下に転がる、もう動くことはない大好きな人をみる。血溜まりの真ん中に浮かぶ、大好きな人。はぁ、とため息。

「……おやすみ、なーくん……」

これが、わたしのなーくんの救い方。