13

がっしゃあああん!
と、棚が倒れてきた。わたしと、なーくんの間に。
白い不死と黒髪不死が現れる。
「シキ」
「分かってます!」
黒髪不死は、わたしを庇うように立つ。なにから?……なーくんから。白い不死が駆け出して、なーくんに蹴りを入れようとする。なーくんはそれを避ける。
「……わたしは、」
「あなたは、利用されたんです。」
黒髪不死はいう。
「代償が、記憶、しかも死ぬ付近の記憶だから、自分が不死だと気づかない。うまくやれば、誰にやられたかも覚えていない。……裁判所のボスは、不死の実験体にあなたを使っていたんです。」
「……そっか…」
よかった…、そう呟くと、黒髪不死は驚いて振り向いた。
「……なにが、て顔だね?……ボスさんは、わたしを利用する目的で持っていた。なら、いいんだ…。ボスさんは、悲しむことなんてないから。……でも、でもね、なーくんは……」
わたしのために、一体どれほど苦しんだんだろうね?
がし、と黒髪不死に肩を掴まれる。その顔は苦しそうでありながら、怒りが表れている気がした。
「……あなたは!あの人があなたにどんなことをしたかを思い出してもなお、自分のことでなくあの人のことを考えるのですか!?実験であなたを何回も殺した人ですよ!?それだけじゃない、殺した上で、あなたの隣にいて、いけしゃあしゃあと笑っていたというのに!あなたは、そんなクソ野郎のことを、まだ思うというのですか!?さっきだって!急に現れたと思ったらあなたを殺して、連れ去った!!」
……黒髪不死にも、きっと色々あったのだろうなぁ、と思った。でも、君とわたしは違う。それに、君は知らないでしょう?なーくんはね、わたしのために泣いてくれてたんだよ。なんかいも殺して、なんかいも泣いて。そして、いまとなってはもう、泣くことはなかった。でもね、とても無表情で無感情で、わたしを殺すときの彼は、彼ではなかった。人間ですらなかったの。でも、少なくともわたしが生きてなーくんの側にいるときは、なーくんはなーくんで、人間で、幸せだったの。……でも、でも、もしかしたら、幸せで苦しかったのかな……。
「っあ!」
その声は、白い不死のものだった。
「リア!?」
白い不死は、棚に叩きつけられていた。ナイフが腹と首と足に刺さっている。たぶん、一回ぐらいは死んだだろう。なーくんは、どこから持ってきたのだろう、刀をふり、棚を割った。なーくんの専門武器は銃だったはず。色々な武器が扱えるとは、やっぱりトップ2だけあるなぁ、と思った。
「リア……!!」
切られた棚の上半分は、白い不死の上に落ちた。なるほど、あれで、不死であっても暫くは動きを封じられる。なーくんが、こちらをみた。ああ、だめだよ、なーくん……その目はだめ。なーくんじゃない。人間じゃない。
「……るな」
「!」
黒髪不死は、わたしの前に出る。
「レウに、触るな……!!」
なーくんは強い。そんななーくんが、油断出来ないと言うこの黒髪不死も、強いのだろう。でもいま、黒髪不死はどんな理由かは知らないが動揺した。そしてなーくんは、人間じゃなかった。だから、結果はもう、考えるまでもなかった。5秒後には、黒髪不死は地に伏していた。なーくんは、その黒髪不死を、蹴る。
「なんで……なんで……おまえらが……現れなかったら……こんな、ことにはっ……!」
いままでにない怖い顔が、黒髪不死を見下ろす。
「な、にが……!不死を、利用したの、はおまえらだろう……!!ぐっ」
「だまれ!!……レウは…不死に会っちゃ……いけなかったのに…!
不死に会ったら……レウは………
くそっ!!」
ずしゃああっと、血が飛ぶ。黒髪不死が、死んだ。果たして生き返るのにはどれくらいかかるのか。それを知っているのか、なーくんは白い不死のときみたく、動きを封じるようなことはしなかった。刀を突き刺したままにして、ゆっくりと顔を上げる。
「はぁー……、はぁ、」
なーくんは、苦しそうに息を吐く。
ああ、なーくんが苦しそうなのは、わたしのせいだ……。なーくんが、ゆるりとこちらを見る。なーくんが、あんなに暗い目をするのは、わたしのせいなのだ…………。
すべては、わたしのせいなのだ…。
「……レウ、」
がちゃ、と、銃口。
わたしは、その銃口を気にしない。
わたしは。
わたしは、さっきからずっと。
なーくんだけを、見つめている。