12

思い出した。
そうだ、あの目は、
もう、遠くの昔、
村のみんなが、わたしに向けていた……、

ざしゅ、と赤い血が飛ぶ。なんでだろう、なんでこうなったんだろう、なにが、なんで。歪む視界の中で、ごめん、と彼は泣く。ああ、ごめんね。わたしも謝る。なにも知らないのに。

ごふ、と血を吐き出す。なんでだろう、なんでこうなったんだろう、なにが、なんで。歪む視界の中で、ごめん、と彼は呟く。ああ、ごめんね。わたしも謝る。なにも知らないのに。

ひゅ、と息がかすれる。なんでだろう、なんでこうなったんだろう、なにが、なんで。歪む視界の中で、ごめん、と彼は囁く。ああ、ごめんね。わたしも謝る。なにも知らないのに。

ざしゅ、と赤い血が飛ぶ。なんでだろう、なんでこうなったんだろう、なにが、なんで。歪む視界の中で、彼はなにも言わない。ねぇ、なにか、言って……?ねぇ…なーくん……。


ねぇ、なーくん。
あなたは、わたしを……。

目を覚ます。
温もり。ゆっくりと顔を上げると、隣にいた人、わたしが寄りかかってた人、なーくんはわたしをみてほっ、としたように笑う。どこかの埃っぽい倉庫の中、床にわたしたちは座り込んでいた。
「レウ、よかった……。大丈夫?」
「、なーくん……」
目をこすって、唸る。欠伸をしようとすると、なーくんがわたしの口を手で塞ぐ。
「むぐっ」
「しっ。…あの二人が、たぶんまだ近くにいる。」
あの二人……………不死。
「…いま、どんな状況なの……」
「俺が来てすぐ、レウが不死の片方にやられて、すぐに逃げたんだよ。……覚えてる?」
わたしは、小さく首を横に振る。……わたしは、また、
「あの二人、不死の中でも特に有名なんだ。強いし、何回も裁判所とやり合ってる。」
「白い不死のほうはボスさんに聞いてたけど……黒髪のほうも?」
なーくんが頷く。
「レウがいう白い不死は、きっとリアのことだね?黒髪のほうは、シキ」
名前まで知っていたのか…。
「シキのほうも、リアほどではないが油断ならないよ。あれ、目がほとんど視えてない状態で戦ってるから。」
……は?
「え?でも、え?わたし、戦ってはいないけど、あの人何回もわたしと目があったけど?」
「たぶん、まだ微かには見えてる。あと、気配とかかな。でも、あと何年か後には完全に視えなくなるだろうね」
「……んん、なーくん、ちょっと分かんないかも?」
「………あぁ。不死には、不死でいるための代償があるんだ。命を保つために、なにかを失っていく。」
「……世界渡りとは、またべつの代償……?」
こくり、と頷く。なーくんは、ちらりとわたしをみて、次に首をまわして辺りを見渡す。敵の様子を伺っているのか、それとも……さきほどからなーくんを見つめ続けるわたしから目をそらしたのか。わたしはなーくんの後ろに近づき、話を続ける。
「白い不死の代償は……声?」
「だろうね。あれも、もうすぐ声を失うだろうね。」
ふぅん、とわたしは言う。なるほど、だからあんなに喋りにくそうにしてたのか。納得。
そして、しばらくの沈黙。わたしは、小さく息を吐く。冷静な頭の片隅で、それはじわじわとわたしを蝕むようにまとわりつく。逃げることは、できない。
ああ……。なんで、どうして。
「ちょっと、向こうを見てくる。レウ、ここにいて。」
なーくんが立ち上がる。
…わたしは、ごめんね…なーくん。

「わたしの代償は、記憶、だね」

なーくんが、動きを止めた。呼吸も止めたかもしれない。ゆっくりと動く。何かを言おうとして、言葉は出ず、乾いた笑みを見せる。
「………………え?」
ごめん、ごめんね、なーくん。わたしは、あなたがおもうように、完全ではなかった。なんで、いまここで、代償が効かなかったのだろうね?ここで、わたしがいつも通りに忘れていたら幸せだったのに。代償が効かないだけじゃなくて、いままでの代償さえも、取り戻すなんて。かみさまって、いたとしたら結構いじわるだね?そう思わない?

「わたしは、不死、なんだね」

もう、すべてが悲しかった。