09
どうしようもない苦しさから、はたしてどう逃げようか。あるのは苦しみだけで、いっときの心地よさはすぐに苦しさに塗りつぶされてしまう。苦しさの世界から、どう逃げようか。
「りんごうまーい!」
「元気そうでよかったよ、レウ」
病室にて、わたしはなーくんが向いてくれたりんごを頬張っていた。わたしはなーくんがいるだけでもう心どきどきわくわくで、鼻歌まで歌いたくなるほどご機嫌になるのだ!
「……ごめんね、レウ。怪我させちゃって」
「ん、んー?なーくんが謝る必要はなっしんぐだよ?相手が悪かったさー」
なーくんは、わたしが怪我をしたことをひどく気に病み、来るたびに一回は謝罪する。いわく、
「不死に関わるのは、危険なんだ。ボスには、レウたちが不死に関わるのはまだ早いって、言っておくべきだった。……あのひと、ちょっとレウたちを過大評価しすぎだから…」
だそうで。
そして、いつも頭を撫でてく。嬉しいんだけれども、なーくんはわたしを過小評価しすぎなのではないかなっ?そりゃ、なーくんよりは弱いけどー。わたしだって裁判所として戦うひとなのにー、と、不満がないわけではない。でも、なーくんがこう心配するのは、やはりわたしがかつてやらかしまくったからだと思うと、なんか、ね?無理に仕事に出かけて、罰するどころか逆に返り討ちにあったりその世界の特殊生物にやられたりと、いろいろ、やりましから、ね……!しかも毎回それなりの怪我をしたからね!
「……なんか、わたしもごめんよ、なーくん…」
病室で目覚めて、若干顔色の悪いなーくんを見る、という流れを繰り返した過去をぼんやり思い出し、申し訳なくなり謝る。きょとん、としたなーくんは、うすく笑って頭を撫でてくれた手で、わたしの頬に触れた。
「無茶は、しないでね?」
「もちろん!」
これも、毎回してた気がする。暖かい温もりを頬に感じで、わたしはふと、こういうのいいなぁと思った。
「ー……」
「……?なーくん?」
なーくんは、わたしの頬に手を当てたまま、ふと笑みをなくして、無表情になっていた。ぼんやりとした瞳に、きょとんとしたわたしの顔が見えた。
「……なーくん?」
静かに呼びかける。
「ん?あぁ、なんでもないよ。」
なーくんは、そう言うと椅子から立ち上がり、頭を撫でてからバイバイと微笑んで病室を出て行った。わたしもとびっきりの笑顔でばいびーと言って、なーくんをお見送りした。
それから10分後。
「ひさ、し、ぶり」
白い不死はにこりと笑った。